電力自由化 切替えまだ1%?
4/1の電力自由化スタート後、TV局の取材を2件受けました。
どちらも番組の冒頭、電力会社を切替え(変更)した人はごくわずかだ、という映像があり、何が問題か、今後どうしていくべきか、という展開でした。
実際に電力会社を変更(スイッチング)した人は、全体で1~2%くらい(各々4/27,5/20電力広域的運営推進機関発表データに基づく)で、既存の電力会社を変えずに、自由化メニューに変えた人が同数程度いると言われているので、自由化メニューに変えた人は現在4%くらいといったところでしょうか。
この1~2%(電力自由化スタートの4/1では、0.5%でした)、マスコミは「少ない」、と考えているようです。
年明けからの各社のメニュー発表、予約解禁時点で、新聞紙上では「争奪戦」などという文字が躍っていましたので、各社少なくとも二ケタ%くらいは予測していたのでしょうか。
私は一気にそれ程のことはないだろうと思っていました。(何%かの予測はしませんでしたが)そして、まずは徐々に浸透しているのではないか、とも思っています。
そんなに一気には行かないよ、というにはいくつか理由があります。
1.スケジュールが遅れた
電力自由化スターまでわずか3か月の、1月にようやくメニューが発表できる状況となりました。(当初の予定では昨年10月でした。) あまりに浸透するには短いと言えます。
2.お客さんは奪えても、発電(生産)は奪えない。
自由化でお客さんの争奪戦はできても、生産にあたる発電は未だに既存の電力会社が圧倒的シェアを持っています。戦後「地域独占」の9電力体制が敷かれたときには(工場の自家発電所以外は)100%でした。自由化が徐々に進んだとはいえ、たぶん未だに90%くらいでしょう。つまり生産者の奪い合いができないのです。ですから新規参入者は、発電所を建設するか、既存の電力会社から買うしかありません。発電所の投資は安いものではないので、そんなに一気に何百万kWも建設できませんし、既存の電力会社から安く買えるわけはありません。
3.新規参入各社は当面自社商品とのセット販売に頼らざるを得ない。
そもそも新規参入各社は、電気をはじめて商品として扱います。(工場向けなどでは扱っていた会社はありますが。)
発電(生産)段階でそれほど安くなく、流通である送電は送配電事業者に頼まざるを得ず(コスト競争できず)、小売り段階でメリットを出すしかありません。ガス会社や携帯電話会社などは、自社の顧客に営業できますし、料金徴収のシステムをすでに持っていますので、この点でコストメリットが出せます。この部分でがんばって安価にして
自社のメイン商品とセットにして、ようやく件数を確保できたというところ。
従来より安くなければ買ってくれないので、自社の商品をセット販売するわけです。
セット販売ばかりが目に付く、というのはこういうことです。各社売り上げが伸びれば、さらに発電の投資をしたり、メニューの拡充ができるのではないでしょうか。
4.既存電力会社も自由化商品を販売できる
既存電力会社も、自由化商品を販売できます。既存電力会社は、従来の約款に基づく価格で(いわば定価)販売することを義務付けられています(規制商品と呼ばれます。少なくとも2020年までは残ります)が、もちろん自由化商品を販売することが可能なのであって、既存の電力会社は指をくわえて見ているわけではないのです。
まだまだ消費者の多様なライフスタイルに則したメニュー、各社が工夫をこらしたメニューというものが出てくるには時間がかかると思います。
一方、我々消費者はさめた目で見ているのではなく、積極的に選んで行く必要があります。
契約は慎重に行う必要はありますが、途中解約金をとるような会社ばかりではありません。
商品としての電気はまだまだスタートしたばかり、みんなの行動や意見がこれからの電力自由化の行方を決めるといえるでしょう。